パニック障害の方とそのご家族へのアドバイス

パニック発作は不安が最高点に到達することで出現

パニック障害では、不安が最高点に到達するとパニック発作が出現します。パニック発作は主にパニック障害の症状として知られていますが、他の病でも不安が強くなった時に出現することはよくあります。

パニック発作の方とそのご家族へのアドバイス

パニック発作への耐え難い苦痛

パニック発作が出現する患者さんは、『精神力が弱いからだ』という風に考え、恥ずかしいことと考えておられる方がとても多いです。また、他人にパニック発作を起こしている自分を気づかれることも耐え難い苦痛であるのです。

パニック発作は精神力やこころのあり方とは無関係

パニック発作は脳の神経伝達物質の伝わり方の異常で生じることが知られています。実際に、脳の青斑核(せいはんかく)のノルアドレナリン系の神経が異常に亢進していることやセロトニン神経系の働きが弱まり扁桃体(へんとうたい)という不安や恐怖を察知する部位が過剰興奮していること、さらにリラックスを促すGABA神経系の機能低下が知られています。このように、自分の意思で引き起こされた症状ではないのです。

パニック発作はうつ病の警告症状である可能性

パニック発作が生じている患者さんでは、うつ病を併発しやすいことが知られています。このため、日々の生活で無理を重ねていないか、きちんと休みがとれているか、今一度自分自身を振り返ってみましょう。カフェインの取りすぎもパニック発作を誘発しますので、不安が強い時はできるだけ避けるようにします。

パニック障害の季節性

パニック障害は温度と湿度が高くなる春と夏に発症しやすいことが知られています。また、病気が悪化しやすいのは、8月と12月であることが報告されており、極端に暑いか寒いかなど季節性がとても関係しています。原因ははっきりとわかっていませんが、特に夏場にパニック障害を生じやすいことから、不安を感じた際の体調管理には十分な配慮が必要です。

パニック障害の患者さんへの生活上のアドバイス

1 カフェイン・アルコール・喫煙を避けます。

パニック障害の患者さんでは、カフェインに敏感に反応することが知られており、カフェインによって不安が助長されやすく、発作が誘発されてしまいます。また、アルコールや喫煙も同じように、不安を誘発するので気を付けます。

2 規則正しい生活を送りましょう。

昼夜逆転の生活に陥りやすいため、夜は十分な睡眠をとるようにします。逆に過眠にならないようにも注意します。

3 症状が不安定な時は人間関係を避けましょう。

症状が不安定な場合は、感情的になりやすく、些細なことで相手から嫌われたなどと感じやすいです。このため、状態が悪いときは、よほど病気に理解のある方を除いて一旦人間関係を避け、病状を治すことに専念します。回復すれば、また以前のような人間関係を築くことができます。

4 うつ状態が併発していない場合は適度な運動をこころがけましょう。

これは規則正しい生活にも関係することですが、適度な運動を行うことで、不足していたセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質が回復し、症状の改善に働きます。ただし、うつ状態が同時に起きている場合は、無理をしないようにします。

パニック発作は、脳の神経伝達の異常により出現しています。ご本人は、パニック発作が起こることで耐え難い苦痛を感じているのです。症状が続くことで、うつ病を発症することもあるため、苦しいなと感じたら受診をしてみてはいかがでしょうか。